導入事例

株式会社 ロフト 様

シャープのハンディターミナルで事前登録を行い繁忙期のレジ行列緩和を実現

  • 渋谷ロフト

    渋谷ロフト

レジ待ち時間の短縮は多くの小売業にとって大きな課題のひとつだが、ロフトでは、ギフトシーズンを中心に繁忙期と閑散期の来店客数に大きな違いが出るという特性を持つ。

これを解消するためにシャープのハンディターミナル「RZ-H250」を活用してレジ待ち客を対象にした事前登録システムの運用試験を開始。
その運用方法とねらいはどのようなものなのだろうか。

導入の背景

繁閑の差が大きい業態特性に合わせたチェックアウトシステムを模索

  • スクエアに組まれ た渋谷ロフトのカウンター。通常期にはPDAで登録を行う。

生活雑貨を幅広く取り扱う株式会社ロフトでは、以前からギフトシーズンや季節イベント時などの繁忙期に客数が急増。レジ待ちの行列ができるケースが多かった。こうした時期に合わせてチェックアウトシステムを確立しようとすると過大な投資が必要になってしまう。適正な規模の処理能力を確保しつつ、繁忙期に生じるレジ待ち行列をいかに解消するかが課題となっていた。

その点について、同社営業サポート部情報システム担当・柳澤秀樹氏は「ロフトの業態特性として繁閑の差が大きく、繁忙期にはレジに長い列ができ、お客さまにストレスを与えてしまう。店舗展開するデベロッパーからも要請があったため、アルバイト採用などで要員を増員し、本部から研修用のPOSを持ち込んだり、店舗で余分に機器を保有しておくなどの形で対応してきました」という。

しかし、こうした人海戦術にも限界があり、レジ待ちが長くなると、気が変わって購買そのものを取りやめてしまうお客さまも出てきてしまう。

このような事態を防ぐため、同社では業態にあったレジの効率的な運用方法を幅広く検討してきた。

「たとえば現在普及しているセルフレジの導入や、買上げ点数が少ないお客さまの専用レーン、カード決済専用レーンの設置、またスルーレジという形式で一方通行型の動線をつくるレジ方式などを検討しました。しかし、セルフレジは、ラッピングを希望されるお客さまが、精算した後に別のサービスカウンターに移動する必要が出てくる。専用レーン方式も、実際にお客さまを誘導するのはなかなか難しい。こうした検討を行うなかで、考案されたのが2008年より全店導入した『PDA販売システム』と呼んでいる方式でした」(柳澤氏)

このシステムは、1台のPOSレジに対して、複数のPDAで事前に売上登録を行い、POSでは精算のみを行うという方式。シャープのハンディターミナルを使用したこのシステムは一般的には「前さばき」とも呼ばれている。

支払額はPDAの画面に表示されることになるが、当初は「POSでの表示と比べて小さくて見づらい」という意見もあったので、改良を加えるなどして運用を行ってきた。

現在の活用状況

新機種による「事前登録システム」の試験運用をスタート

  • 繁忙期に行うハンディターミナル「RZ-H250」による事前登録。モバイルプリンタで承り票をプリントする。

「PDA販売システム」の導入は、効率化に大きく貢献し、POSの台数を削減することも可能になったという。

こうした第1段階を経て、現在試験運用を行っているのが、レジ待ち客を対象にした「事前登録システム」だ。こちらはPDAで登録するだけでなく、お会計承り票をモバイルプリンタで発行。顧客はその承り票をレジに持っていきPOSでは精算のみを行うもの。

繁忙期には本部のスタッフも店舗に入るので、これらのスタッフが並んでいる顧客の商品をスキャンして、お会計承り票を発行するほか、精算方法の確認や、ポイントカードをご利用いただく場合はカードのご用意をお願いするなど、POSでの処理時間短縮に向けたサポートを行う。

この方式のメリットのひとつは、従来の「PDA販売システム」と類似したオペレーションを行うので、スタッフの習得に時間がかからない点だ。日常からPDAで登録する作業を標準化することで、さまざまなケースにフレキシブルに対応できることになる。

試験運用は2015年12月の第1週からスタートした。そのためのPDAとしてシャープのハンディターミナル「RZ-H250」を16店舗に導入した。

「事前登録システム」方式は旧ハンディターミナルでも運用可能だが、新機種を導入した理由について柳澤氏は次のように説明している。

「まず、実際にテストしてみた結果、新機種はモバイルプリンタのレスポンスが格段に速かった。新機種だけに電池の持ちもよく、さらに女性スタッフでも片手で操作できる操作性が魅力だった。実際にハンディターミナルを扱ったことがある店舗スタッフが試験的に使ってみて、操作性のよさを体感したようだ」

さらに「PDA販売システム」「事前登録システム」という独自のシステムの導入は、レジ待ち時間短縮だけでなくさまざまな相乗効果を生んでいる。特に開店直後の顧客が少ない時間帯では、必要なPOS台数が少ないため、POSレジを立ち上げるためのアイドルタイムを節約できるというメリットもある。

新機種のもうひとつの魅力は本部でハンディターミナルの使用状況を詳細に管理できる「intAlerm」(シャープビジネスソリューション)の端末管理ソリューションを幅広く利用できる点だ。

  • 「intAlerm」の基本画面。

店舗では通常、すべての端末が平均的に使用されることはむしろ少なく、故障などで一部機器が使用されないケースも出てくる。

「同様の機能は早くから提供されており、試験的に活用してきましたが、新機種では対応する機能が増えています。当初はどのようなデータがあり、どのように活用できるのかを確認することが目的でした。また、われわれが欲しいデータは、全店舗におけるPDAの活用状況の詳細なデータです。たとえば機器が遊んでいないかなど、実状を把握して適正な台数を求めたい。それができればコスト削減にもつながります」(柳澤氏)

このほか、店舗ごとにPDAがどんな使い方をしているかを知り、成功事例があれば他店舗にも広げていきたいという。大切なのは、何かPDAに問題があった時、店舗からのアクションを待つのではなく、本部からメンテナンスや更新の行動を起こすことができる点だろう。

柳澤氏は「10台必要な店なのに故障機を放置し、足りない台数で運用しているようなことがあるとすれば本末転倒です。お客さまに迷惑がかかってしまう」と指摘する。

さらに同一店舗内でも部門ごとに繁閑の差があり、PDAの使用状況が異なるケースでは、実状に合わせて部門を越えてPDAを融通することも検討できる。

  • メインメニューから売上画面、承り票印刷処理へと画面遷移します。

    事前登録システムの画面。

将来の活用イメージ

PDAで電子マネーやカード決済までを視野に

  • 営業サポート部情報システム担当 柳澤秀樹 氏

    営業サポート部情報システム担当
    柳澤秀樹 氏

ハンディターミナルは事前登録だけでなく、検品や発注など通常の店舗業務にも使用される。1台のPDAがさまざまな機能を果たすことが業務の効率化につながり、コスト面でのメリットを生むことになる。

この点において柳澤氏は、将来的に活用方法の可能性について、「PDAでカードや電子マネーの決済処理ができないかと考えています。これが実現すれば、電子マネーのお客さまならそこだけで完結するレーンをつくることができる。さらに、まだまだハードルは高いものの、顧客データの活用による接客支援に活用できれば大きな武器になると考えています。また、今回の試験運用結果を検証し、課題を整理していきたい。『事前登録システム』についても、今回の繁忙期ではよく使う店とそうでない店があった。さまざまな観点からハンディターミナルの可能性を検討し、より有効に活用していきたい」という。

2016年3月発行

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