導入事例

一般社団法人 日本貨物検数協会 様

輸出車両の検数業務に課題

輸出入に欠かせぬ証明

  • 日本貨物検数協会 内山課長

一般社団法人 日本貨物検数協会は、船舶、岸壁、倉庫などの港頭地区をはじめとする貨物の物流過程において、作業現場に立会い、貨物の数量・状態・本船での積付状況などを確認し、公正な立場で証明を行う第三者証明機関だ。
その証明書は船荷証券(B/L)発行や通関手続き、保険業務に使われ、輸出入時の税関申告などに虚偽のないことを保証する手続き上で不可欠なものである。

中でも、輸出入自動車の本船揚積時やモータープールの搬入出時に、損傷の有無・車番・台数・仕向地・積付場所などの情報を確認し、証明することが同協会の主な業務の一つとなっている。

本船での検数作業には、2005年に「自動車船検数システム(JCATS)」を物流システム部で独自開発し導入したのだが、現場にはなお課題が残されていた。

「最近は自動車専用船が大型化して輸出車両の輸送台数が増え、検数業務にも正確性に加え、スピードが求められてきたのですが…」と同協会物流システム部の内山課長は話す。
「船積み前の岸壁での車両荷受到着確認業務については改善が遅れ、紙書類に数百台単位で情報を書き写し、現車とチェックする従来通りの手順であったため、作業が非常に手間のかかるものになっていました」

無線ハンディターミナルの導入へ

そこで2年前、まず中古車用に中古車書類作成支援システムを開発し導入。船積指図書(S/O)データと車両情報をコンピュータ入力し、必要情報を一覧表のチェックシートとして出力できるようにした。これにより準備作業時間は半減できたのだが、現車とのチェック業務は相変わらずの紙ベースで、目視によって確認していた。

2人1組で数百台、時には千台分にもなる一覧表を手に、中古車のフロントガラスに書かれたシャーシ番号と照合し、仕向地などのチェックを繰り返す作業である。何枚もの一覧表から該当番号を探し出す手間、屋外の風雨で紙が破れる、終了後には全員のシートを集めて集計作業が必要と、作業効率に大きな問題を抱えていた。

「より効率的な仕組みはないかと考えた結果、無線ハンディターミナルを使って荷受システムを新たに構築することにしたんです。カメラ搭載端末を探して比較検討した結果、液晶画面の見易さ・携帯電話に近い持ちやすさと軽さなどの長所から、シャープのハンディブレイン(RZ-H220)を採用しました」(同)
こうして中古車書類作成支援システムに結合する形で生まれたのが、「輸出車両荷受システム」(Receiving VehiclesSystem:REVES(リーブス))である。

新システムで大きな効率化効果

REVES(リーブス)のシステム構成・ワークフローは図表-1の通りで、その特長には以下のような点がある。

  • 図表-1 輸出車両荷受システム(Receiving Vehicles System:REVES)のシステムフロー

    輸出車両の荷受データを無線LANを利用して管理用パソコン(REVESマスターPC)と車両荷受用PDA(REVESモバイル)で共有し、管理用パソコンで車両荷受用PDAによる荷受車両の確認作業状況がリアルタイムに把握できる。

デジタルデータを無線連係

  • ハンディターミナルを見ながら軽快に車両をチェック

輸出車両の情報は、S/O情報をもとに中古車書類作成支援システムにて作成。管理パソコンでE/D(輸出申告書)と車両の到着情報を簡単に照合しチェック作業に入れるので、誤った車両の受付を防止できる。急な車両の追加やキャンセルにも対応可能だ。

このデジタルデータをそのまま、管理パソコンから無線LANでハンディターミナルに送信し連携する。毎日発生する作業ではないため、パソコンと無線LANのアクセスポイント(AP)は車に積んで、本船の到着に合わせて中古車が準備された岸壁に移動している。

APの拡張アンテナでRZ-H220と数十メートルの交信距離を確保できるので、作業者は自由に移動可能。屋外での無線LAN利用形態として実用的なアイデアで、このパソコンから各端末の作業進捗状況もリアルタイムに把握できる。

ペーパーレス作業で大きく効率化

チェックシート作成・出力が不要の、完全ペーパーレス作業になった効果は大きい。作業者は端末画面で(1)車両チェック、(2)ダメージチェック、(3)アクセサリーチェック、(4)カメラ撮影から作業を選んで、下図のように進む。画面はグローバル対応に向け、全て英語表記としている(シャープが開発)。

車両チェックならまず、現車のシャーシナンバーを見て端末に下3桁だけ入力すると候補番号が出てくるので、すぐ選択可能。従来は一覧表を繰って荷受車両の番号を探していた検索作業が、飛躍的にスピードアップした。後はS/O番号と仕向地などを確認し、消し込めば完了。
また作業終了後、全員のチェックシートを照合し行っていた消し込み確認作業も、一切不要になっている。

  • 図表-2 ハンディブレインRZ-H220のREVES業務操作画面

    グローバル対応に向けに全て英語表記の操作画面。
    下3桁のシャーシナンバーを入力するだけで車両の検索が可能。

新サービスの提供も可能に

シャープのRZ-H220は、無線端末機能・PHS機能・バーコードスキャナとともに200万画素のカメラ機能をもつ。これを活用して各中古車のダメージ、アクセサリ(ETC、カーオーディオその他)など現状を撮影し、画像を車両データに紐付けし提供することができる。

  • 車を傷つけぬよう専用カバーを付けた端末と撮影画面

「輸送途中や外地で傷が付いたりオーディオやETCなどアクセサリーの盗難などの不測の事態に備えて、発地での現状を記録してほしいとのニーズがあります。カメラはこれから活用していく予定です」と内山課長はいう。
「以前はそうした時デジカメで撮影していましたが、この端末1台で行えるほか、車両データとの紐付けも自動的なのでとても便利です」

サービス差別化の武器として

新システムREVESは川崎港で2010年11月から端末4台で本稼働。現在横浜港でもテスト中で、新年度から名古屋、門司、大阪、またタイ、シンガポールなど海外に展開する構想もある。

「紙も目視の照合作業もなくなり、従来2人1組で行っていた作業が1人でよく、風雨でも平気で携帯電話感覚で使えると、現場作業者はとても喜んでいます」と内山課長は続ける。
「当初は抵抗感もあったようですが、テストで実際に使ってもらったら若い作業者は『こちらの方が探しやすい』とすぐに納得してくれました。画面は日光の下でもくっきりと見やすいんです」
投資額は端末システム開発費を除き(上位システムは社内製)、端末4台と無線LANシステム等の最小構成で60万円からと、非常にリーズナブルだ。

今後は「バーコード読み取り機能をぜひ活用したい」と内山課長は展望する。「新車の管理票のバーコードをこの端末システムで管理できれば、一層の効率化・正確化が可能になる。将来的にはコンテナ管理への応用も含め、より優れたサービスで差別化したいと考えています」
協会では新システムを武器に、検数など基本業務以外の分野にも進出し、新しい物流ニーズに応えていく計画だ。

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